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2017.08.03 | PICKUP

【Vol.04 掲載記事】クールジャパンを追う! 垣間見えてきた 「DAISUKI」のポテンシャル

【INTERVIEWEE】DAISUKI株式会社 代表取締役社長 柴田邦彦

【「DAISUKI」サービス終了告知/緊急掲載】

アニメ業界、あるいはその周辺の読者であれば「DAISUKI」というサービスの名前は聞いたことがあるはずだ。2013年2月に発表されたこのサービスは、アニメ関連会社ならびに広告代理店の7社が出資して設立されたDAISUKI株式会社が運営するもので、同年5月から海外向けに特化してアニメを配信している。既に『キルラキル』などの話題作が配信中だが、日本からは視聴できないため、どんなサービスなのか具体的なイメージを持っている人は意外と少ない。今回は、DAISUKI株式会社代表取締役の柴田邦彦氏へのインタビューを交えながらそのサービスの実像に迫る。

 


失われたチャネルの再構築を目指して

DAISUKIの出資社には、アニプレックス、サンライズ、東映アニメーション、トムス・エンタテインメント、日本アドシステムズ、電通、アサツーディ・ケイ(ADK)といった、アニメ関連企業、広告代理店が名を連ねている。7社のうち過半数を占めるアニメ作品の配信権を持つ会社を、電通・ADKがビジネス面で支えるという座組になっている。

代表を務める柴田邦彦氏はADK出身。国内外での日本アニメ関連業務を長く手掛けた人物だ。

かつて日本のアニメは、米国の放送局にとっても視聴率が取れる有力なコンテンツだった。ニコロデオン、カートゥーンネットワークなど専門チャンネルがこぞって日本のアニメを調達、放送していたが、ポケモンが世界を席巻して以降、その巨大な利益に気づいた彼らは、放送枠の確保に対して強い条件を求めるようになった。もともと、アメリカや海外の放送網では、全国放送という枠を押さえるのはコスト的にも非常に困難だ。しかも番組内容に関連する商品のCMを流すことが禁止されていることも多い。商品を直接訴求しようとすると、放送枠とは別のCM枠を別途確保する必要がある。

こうして放送枠の価格は高騰し、権利も求められ、商品の告知も困難という悪条件が重なり日本のアニメは徐々に番組表の良い時間帯から姿を消していった。

そして、その後ネット=違法動画サイトの台頭によって、米国はじめ海外で正規にアニメを視聴してもらう機会そのものが失われ、パッケージビジネスも弱体化した。繰り返し放送される子ども向け名作は確かに視聴率を維持しているが、マーチャンダイジングのポテンシャルは低い。その状況や過程を柴田氏は目の当たりにしている。「海外市場がどんどん弱くなっていき、引いては日本のアニメが作れなくなるのではないかという危機感があった」と振り返る柴田氏。その後、2008年のBS11の開局に関わったことが、のちのDAISUKIのコンセプトにヒントを与えている。テレビのデジタル化移行によって地上波では避けられない放送エリアという制約条件を、全国一律に放送が可能なBSという新しい選択肢が補完することになったこのとき、BS11はアニメ作品を数多く調達し、通販番組と共に編成の主軸に据えるというユニークな方針を取ったのだ。ここでの経験や手応えが、日本から海外に舞台を移したDAISUKIには活かされている。

「違法配信サイトは、かつてのファンサブのように単に映像を視聴させるだけでなく、成長著しいネット広告の売上を違法配信コンテンツによって奪い、版権を不正利用したオンラインゲームサイトへアフィリエイトを通じてユーザーを誘導するなど、ビジネス・マネタイズの領域も侵し始めている」と柴田氏。そこで、DAISUKIは、まずは「正規版」を視聴する手段を海外のアニメファンに提供することを第一の目的としている。配信は原則として無料。会員登録の必要も無い。(そのため、日本国内からはアクセスを制限している)気軽に、一般的な動画配信サイトで作品を楽しむのと同じ感覚でDAISUKIにアクセスしてもらい、そのうえで、優良なアニメファンである彼らをグッズやサービスの利用に誘導していこうというのがその狙いだ。

通常は日本からはアクセスできないDAISUKIのサイト。しかし、今回アニメビジエンスではiPadアプリから特別に視聴する機会を得た。表にまとめたように、国内で現在放送中の作品の一部がサイマル(日本での放送後1時間以内での配信)で視聴できるようになっている。英語の字幕はもちろん、中国語など主要な言語にも対応し、再生を中断することなく切り替えることができる。英語のみに対応していた立ち上げ当初は9割近くが米国からのアクセスだったというが、多言語対応が進んだ現在では、その比率は45%まで下がり、アクセス2位にイタリア、その後ドイツ、フィリピン、カナダ、シンガポール、スペインと、欧州・アジアへと拡大と多様化が進んでいる。

海賊版サイトに比べ早く、コストも掛らず、しかもより良いユーザー体験を提供することで、海外のアニメファンにとっては、敢えて海賊版サイトへアクセスする理由がなくなる。結果として、海賊版サイトへのアクセスを封じ、正規の商流へ彼らを誘導する道筋をつけようというわけだ。また権利者の海外ビジネス展開に応じて、配信国・地域・言語も個別に設定が可能となっている。

番組の最後にはスタッフ・キャストが英語で表示され、その後関連商品のECへの誘導が表示される。現状ではこの商品ラインナップはグッドスマイルカンパニーのフィギュアやバンプレストの商品が中心となっており、その多くは海外のファンにとって「ここでしか買えない」限定感のあるラインナップになっているが、今後これもさらに拡充される予定だ。

 


DAISUKIの目指す先にあるもの

DAISUKIは14年度中に120万人の視聴者獲得を目指している。現在のところ、約130万人まで達しており、計画通りに進捗していると柴田氏は語る。この130万人というのは、現状の違法配信サイトや、YouTubeのような動画共有サイトに比べると小さな規模だが、まずは単に視聴して終わりではなく、その後の正規の商品の購入につながる優良な見込み客を確保したいという構えだ。

コンセプトを理解したうえで、実際にアプリでサービスに触れると、その出来映えの良さが強い印象を残すDAISUKIだが、課題がないわけではない。すでに、海外のアニメファンがBLOGなどで指摘しているように、そのラインナップは現状30タイトル程度と全体から見れば非常に少ない。せっかく1つ1つのタイトルに対しては高品質なユーザー体験を提供していても、見たいタイトルがそこになければ、ユーザーはやがて他のサイトをまず利用することになってしまう恐れがある。

現在、海外のアニメ展示会などにも積極的にブースを出展し、コアなアニメファンへのサービスの訴求や商品のテストマーケティングを行っているが、加えてパートナーあるいはパートナー外からの作品の調達によるカタログの充実が図られなければならないだろう。

また、物販についてもフィギュアが中心の現在のラインナップが十分でないのは自明だ。柴田氏が目指す、商流の再構築のためにはさらなるパートナーの獲得が不可欠だといえるだろう。

日本からDAISUKIのサイトにアクセスすると、映像が見られないのは仕方がないのだが、現状会社概要が表示されるだけの非常に簡素なコンテンツしか用意されていない。国内のパートナー獲得に向けては、国内向けの広報もさらに力を入れて欲しいというのが正直なところだ。

このあたりの疑問を、率直に柴田氏にぶつけてみたところ、「これらの課題が解決する道筋はついている」という答えが返ってきた。まだ諸事情により具体的な内容は明かせないということだが、今後、大きな発表が控えていると見ておいて良さそうだ。

DAISUKI_WEB

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